2008-01-01から1年間の記事一覧

17.国家錬金術師【03.Side Riza 〜誓い〜】後編

【Caution!】 このSSは、超未来捏造話です。苦手な方はお避け下さい。 あの日、あの人は彼の持つ全てをもって、誠心誠意、私に言葉を尽くしてくれた。 長年共に同じ道を歩いて来た我々は、往々にして語らずとも何となく通じ合うものがあり、それで通してしま…

17.国家錬金術師【03.Side Riza 〜誓い〜】前編

【Caution!】 超未来捏造話です。苦手な方はお避け下さい。 錬金術は等価交換だなどと言うが この想いと等しいものなど 存在するのだろうか * 『前略 元気にしているだろうか。 こちらは元気だ。 先日は手紙をありがとう。 エリシア嬢に第二子が生まれたとか…

17.国家錬金術師【02.Side Roy 〜想い〜】後編

【Caution!】 超未来捏造話です。苦手な方はお避け下さい。 私の回想は、彼女の簡潔な一言で打ち切られた。 「そうでしたね、短期スパンで物事を判断するべきではありませんでした」 そう言って彼女は、微笑んでみせる。 窓のない部屋に、陽が射し込んだよう…

17.国家錬金術師【02.Side Roy 〜想い〜】中編

【Caution!】 超未来捏造話です。苦手な方はお避け下さい。 冬の冷気をはらんだあの日の空は、恐ろしい程に澄み渡っていた。 あの日、私が一人で裁きを受ける話をした時、彼女は憤りを露わにして抗議し、そして、いつまでもいつまでも泣き続けた。 それはそ…

17.国家錬金術師【02.Side Roy 〜想い〜】前編

【Caution!】 超未来捏造話です。苦手な方はお避け下さい。 私の魂を裁くのは君 私の魂を救うのも君 * 「ロイ・マスタング、入れ」 ガチャリと音をたて、窓のない部屋の扉が開く。 この部屋に来るのも、もう何度目だろう? 未だに大本命に当たった事はないが…

17.国家錬金術師【01.Side Riza 〜願い〜】後編

【Caution!】 このSSは、超未来捏造話です。苦手な方はお避け下さい。 「両国は我が国の過去の戦争責任を問うてきた。軍事国家時代のな。それから、イシュヴァール民族迫害に於ける人種差別の国際的制裁についても、だ」 そうだ、それは休戦協定の時も大きな…

17.国家錬金術師【01.Side Riza 〜願い〜】前編

【Caution!】 このSSは、超未来捏造話です。民主化後アメストリスにおける、ある結末が前提になったお話です。未来捏造苦手な方はお避け下さい。また、単純なハッピーエンドがお好きな方には、お勧めいたしかねるかもしれません。 また、以前からお運び頂い…

if【case 03】

if【case 03】:もしも、リザの酒癖が非常に悪かったならば * 「ただいま」 そう言ってドアを開ければ、部屋が酒臭い。 先に帰して正解だった。そう思ってロイはパチリと電気をつけた。 玄関には、余程酔っていたのだろう、彼女の私物があさっての方向に転が…

if【case 02】

if【case 02】:もしも、リザの寝起きが非常に悪かったならば * 「中尉、朝だ。起きたまえ」ロイは寝室のカーテンを勢いよく開ける。低く差し込む朝の太陽が眩しく部屋の中を照らし、白いシーツを眩くきらめかせる。名を呼ばれた主は目映い光を避け、もそも…

watch over

watch over: 〜の世話をする、見守る * 「ただいま」 そう言ってドアを開ければ、部屋は暗い。 先に帰した筈なのに。 そう思ってロイはパチリと電気をつけた。 玄関には、余程急いでいたのだろう、買い物の袋が転がっている。 彼女のシャンプー、ロイの剃刀…

if【case 01】

if【case 01】:もしも、鋼の世界に『ツンデレ』という言葉があったならば * 「お前、ツンデレってどうよ」 「どうよって言われてもなぁ」 「【ツンデレ】普段は好きな人の前では素直になれずツンツンしている女性が時折見せるデレデレした様子の落差に魅力…

Silver 2

マスタングは頭上に瞬き始めた一番星の輝きを仰ぎながら、師匠の家に向かって走っていた。 あっという間に落ちてしまう夕陽は、冬が近いことを告げている。 頬を切るような冷たい空気に、マスタングは走りながらふるりと身震いした。 暮れていく陽は、マスタ…

Silver 1

マスタングは困っていた。 困っているといっても、すごく困っているわけではない。 ちょっと困っていると言うか、戸惑っていると言った方が近い気がする。 重いような、軽いような、複雑な足取りでマスタングは師匠の家に続く道を歩いて行く。 錬金術を学ぶ…

Gold【Side L】

また、いなくなってしまった。 リザはしゃがみ込んだまま膝を抱えて、小さな友達をじっと見つめる。 頭の側と尻尾の側の2つに別れてしまった“ヤモ子”は、びっくりしたように両手を開いて地面の上で仰向けに転がっていた。 リザはぎゅっと口をへの字に曲げる…

Gold【Side R】

マスタングが師匠の家を出ようと玄関の扉を開くと、気の早い秋の陽はすでに傾き始めていた。 まだ習い始めたばかりの錬金術はマスタングにとって全てが新鮮で面白く、師匠の話を聞いていると1日があっという間に過ぎ去ってしまう。 心地良い風に乗って何処…

Black

ホークアイの表情が驚きに歪んでいる事を目の端で捉えながら、彼は満足げに黒に近い水色(すいしょく)をたたえたカップを口に運ぶ。 紅茶は予想通り、かぐわしい芳香と共に彼好みの温度と濃度で彼の口を楽しませた。 彼女は彼の妻の次に紅茶を淹れるのが上…

後書きにかえて

とても時間がかかってしまい、申し訳ありませんでしたが、無事に全てのリクエストを書かせていただく事が出来ました。どうも、お付き合い頂き、ありがとうございます。 今回は難産も多く、それでもこういう側面からのアプローチもありかと色々考える事もあり…

Bubble Bath Blue

子犬が我が家の一員になったその日、大佐は早速大量のドッグフードと犬用の玩具を抱えて私の部屋にやって来た。 「ペットショップなどという所には初めて入ったが、色々なものが売っているのだな」 そう言って大佐は嬉しそうにカラフルなボールやロープを編…

薔薇と嫉妬

国軍大佐ロイ・マスタングは、執務室のデスクで一人ほくそ笑んでいた。 彼の目の前の机の上には奇跡のごとく一枚の未決済の書類も載ってはおらず、会議の予定も来客のアポイントメントも全てこなしてあり、尚且つ、今はまだ終業時間の5分前だ。 それは日頃の…

運命はそこにある

放課後の誰もいない渡り廊下は紅い夕陽が映り、まるで燃えるような色合いに染まっている。 長く伸びる影を従えて、増田はのんびりとその廊下を職員室へ向かって歩いていた。 今日も漸く長い一日が終わる。 そう考えながら増田が立ち止まって校庭に目をやった…

この命尽きるまで

大佐を追おうと病室を出れば、彼はすぐ目の前のダストボックスに苦悶の表情を浮かべて座り込んでいた。 普段は瀟洒な伊達男を気取る大佐が、人目も構わず脇腹を抑えてごみ箱に座っている姿はあまりに痛々しいもので、私は思わず目を伏せる。 苦痛に満ちた表…

修羅

注意:一部に戦場に関するやや凄惨な描写があります。ご注意下さい。 よろしければ、以下からどうぞ。 * あちこちで燃える焚き火を目印に、ヒューズは野営地を闇雲に歩き回っていた。 「狙撃手のホークアイはいるか?」 手近な人間を捕まえてそう尋ねれば、…

cigar brown

多分、気のせいではないだろう。 マスタングは、ここ暫く感じていた疑念を確信に変えた。 明らかに、自分はリザに避けられている。 認めたくないが、間違いない。 週末だけの居候としては、この家の“主婦”の機嫌を損ねるような事はしないようにしてきたつも…

眠り姫の行方

昔々、ある国に美しいお姫様がおられました。お姫様は皆に愛され何不自由なく成長していましたが、お姫様の両親は大変な心配ごとを抱えていました。なんと、お姫様はお生まれになった時に、悪い妖精に恐ろしい呪いをかけられていたのです。 「お姫様は20歳に…

じゃじゃ馬ならし

バルコニーから祖父の姿を見つけたリザは、金の髪をたなびかせ、転がるような勢いで階段を駆け降りた。 「おじい様!」 そのままの勢いで満面の笑顔で抱き付いてくるリザを受け止め、グラマン男爵は皺だらけの顔をほころばせる。 「どうした? リザ」 「おじ…

XXX Survivor

「ですから、あれほど現場はハボック少尉たちに任せて、本部を動かないでくださいと申し上げたではありませんか!」 「あの惨状を放置出来るわけがないだろう!」 「言い訳は結構です。それより本隊に連絡を取りませんと。指揮官まで行方不明だなんて、まっ…

手を繋いで

「リザ、珈琲豆が切れてしまったようなんだが、、、」 休日の午後、そう言いながら寝室のドアを開けたロイは、クローゼットを整理をしているリザの手元に目を留めた。 ベッドに座った彼女の青いスカートの膝の上には、可愛らしい白のサンダルが載っている。 …

盤上のピアス

「ホークアイ」 名前を呼ばれると同時に、滑らかな冷たい指がリザの耳朶に触れた。 おそろしく肉感的な唇が眼前に迫り、あっと思う間もなく器用な指はゾクリとするような感触を残してリザのピアスを奪い去り、反対の耳にも同じように手が伸ばされた。 「こん…

cinnamon

さて、どうしたものか。 マスタングは目の前の物体に目をやり考える。 昨夜の分割による計算から考えると、これに手をつけるのは流石に躊躇われる。 しかし、このまま置いておく訳にもいくまい。それこそ、また別な問題が発生しそうだ。 マスタングは、己の…

look-over

look-over:【名】点検、検査、チェック、吟味 * 「よくもまぁ、飽きないものだな」 錬金術の本から顔を上げ呆れたように言う大佐に、私は黙って笑顔を向けた。 そして再び視線を机上に戻して、作業に没頭する。 見慣れた我々のいつもの休日の光景だ。 ゆっく…