2009-01-01から1年間の記事一覧

それが、彼の方式

「というわけで、奴が最後に目撃されたのは、バスターミナルの煙草屋で間違いないようです。店番の婆さんに写真で確認とってきました。今後は、あの近辺での聞き込みを継続するのと同時進行で、管轄の不動産屋の闇物件リストをあたる予定です」ブレダは手の…

SSS集 7

1122SSS 気付けば、夜が更けていた。 ロイはウンと伸びをすると、取り寄せたペーパーから顔を上げた。時計の針は既に10時を回り、彼は何か自分が忘れ物をしているような気がしてソファから立ち上がった。 帰って直ぐに彼女から預かったブラックハヤテ号に…

台所の錬金術師

「まだ決まらないんですか?」不満を隠そうともしないリザの苛立った声に、マスタングは困った顔で頭を掻いた。「こればかりは、どうにも……なぁ」そう言いながら彼は肉屋の店先にぶら下がるソーセージを見つめている。彼の自転車の前かごに乗せたリザの買い…

Black out

今月号ネタバレ鬱っぽいSSS&感想です。OKの方のみ、スクロールでどうぞ。 【Black out】 リバウンドだ。何の脈絡もなく、そんな言葉が頭に浮かんだ。それは思考によってもたらされた結論ではなく、錬金術師としての脊髄反射のような直感だった。分解される…

魔法使いのラジオ

時計の針が夜の十時を回る頃、リザはいつもの通りに客間のドアをノックする。いつも通りの熱い珈琲と少しの甘いものの差し入れをしたリザは、いつも通りには立ち去らず、机に向かうマスタングの背中に向かって話しかけた。「あの、マスタングさん」「なんだ…

if【case 05】

「まったく、ひどい報告書だな」 ロイはそう言うと乱雑なサインを書き散らすと、エドワード・エルリックが提出したリオールでの偽の賢者の石を使った新興宗教詐欺の報告書を机の上に放り投げた。 リザはクリップで留められた数枚の紙の束を丁寧に拾い上げる…

生きる

今月号ネタバレですよ〜 オケイの方のみ、スクロールどうぞ〜。 SSS 生きる寒い。体内から流れ出た血が、共に体温を流していく。寒い。止血をしようと首を押さえた手に、力が入らなくなっていく。寒い。頭上で戦闘が起こっているのに動けない。寒い。息をす…

I LOVE YOU を訳しなさいバトン

サクラリウムのサクラちゃんから貰いました。何と言う字書きへの挑戦状!(笑)直感でパッと書いたので、まぁ、こんなもんで許して下さい。サクラちゃん、ご期待には応えられたかしらん?(笑) 【I LOVE YOU を訳しなさいバトン】 ●ルールその昔「I LOVE YO…

SSS集 6

彼の知らない彼 「ん?」 本棚から落下してきた錬金術の専門書を頭で受け止めたロイは、怪我がないか確認しようとあわせ鏡で己の後頭部を見て不審そうな声を上げた。「どうかなさいましたか?」「いや、こんな所に前からホクロがあったかと思ってね」 リザの…

オタク歴史バトン

オタク歴史バトンだそうですよ、別館書くのに飽きたので息抜きに。藤丸様からいただきました。あんまり面白くないでしょうが、ま、にぎやかしに。 オタク歴史バトン 1.ヲタクの歩み 中学〜高校の頃、友人たちとコピー本作ってました。オリジナルのファンタジ…

スパーク、ありがとうございました!

改めまして、日曜日に合同サークル「冬桜」にお運びいただきました皆様、ありがとうございました。今回は初めてのオンリーではない大きなイベントということで、またまた緊張かと思いきや、意外にまったりで穏やかに過ごすことが出来ました。それでも、やは…

Alice Blue Ver.Roy

夜中にふと、目が覚めることがある。 別に深酒をして眠りが浅くなっただとか、昼間執務室で居眠りをしてしまっただとか、そんな明確な理由があるわけではない。ただ、本当にぽっかりと眠りの隙間で足を踏み外したかのように、不意に目が覚めてしまう。そんな…

Ashgray4

「貴女がそう望むのであれば」ロイはそう言って、言葉を切ると目の前に立つ女のヘイゼルの瞳を見つめた。彼女とよく似た彼の副官は、痛ましい表情を浮かべ、彼の言葉に耳を傾けている。「私がそう言うと、彼女は黙って頷いた。そこで私はヒューズに連絡を取…

オンリー、ありがとうございました!

改めまして、日曜日に当スペースまでお運びいただきました皆様、ありがとうございました。今回はお天気も良く、まさにオンリー日和(?)。今回は忘れ物もなく、設営も前回の反省を生かし準備万端(でも、ギリギリは変わらず)。それでも、やっぱり緊張しま…

Ashgray 3

ロイはすっと立ち上がると、真っ直ぐに女を見た。いっそ清々しいほどの諦念を浮かべた榛色の瞳が彼を見返し、女は小さく歩を踏み出した。黙って微笑む女に、ロイは問う。「否定されないのですか?」訝しげな表情のロイの隣りで立ち止まり、女は自分の父親の…

SSS集 5

品定め 「ねぇねぇ、リザ!」「どうしたのよ、レベッカ。そんな嬉しそうな顔して」「そりゃそうよ〜。あんた、新しい射撃の教官、見た?」「見たけど……それがどうかした?」「分っかんない子ね〜。スッゴい男前だと思わない? 俳優の○○みたいで」「そうかし…

五十万回転御礼企画、終了しました

どうも、辺境Blog「Invierno Azul」へお運びいただき、ありがとうございます。おかげ様で、リロードどころか頁移動で回るなんちゃってカウンターが50万回転いたしました。拙い文章ばかりですが、読んで下さってありがとうございます。いい加減、ページビュー…

Ashgray 2

セントラルでの仕事を終え、ロイは記憶を頼りにたどり着いた一軒の家の前に立っていた。訪問の約束をした時間にはまだ少し早かったが、ロイは躊躇せず、ドアをノックした。ノックの音を待ちかねたかのように、扉が開く。暗い家の中には女が一人、ひっそりと…

Ashgray 1

「いつ、お帰りになっていらしたのですか?」執務室のドアを開けたリザは、無人のはずの部屋に上官の姿を認め驚いて思わず声をあげた。「セントラルからのお戻りは、明日のご予定だったはずですが」執務室の素っ気ない椅子に身を沈め、腹の上で手を組んだロ…

Overreaction

overreaction:【名】過剰反応. ああ、まったく何処へ行ってしまったのだろう?マスタングは途方に暮れて、階段の踊り場に座り込む。あの小さくて可愛らしい少女は一旦心を決めてしまうと驚くほど頑固で、いっそ憎たらしいほどに言うことを聞いてくれない。…

SSS集 4

存在位置 控えめに、酷く控えめに彼女の手が私のワイシャツの袖口を握った。 顔を伏せた彼女の白い指先は頼りない薄い布切れの端を縋るようにきつく握りしめ、その肩は少しだけ震えていた。小さく上下するその背を見ながら、私は彼女が口を開くのを待った。…

overkill

【Caution!!】 戦場描写(殺人描写、死体描写、残虐な行為)、オリキャラ要素があります。 またCP要素はほぼありません、それでもよろしければどうぞ。 overkill:【名】過剰殺傷、過剰殺戮 グヂャッ。 激しい音がして、土色の壁に白い脳漿が飛んだ。 リザは…

Lavender【おまけ】

泣く子も黙る(?)イシュヴァールの英雄、ロイ・マスタング国軍大佐殿が自らの副官に頭が上がらないこと、それは今更確認するまでもない事実である。太陽が東から昇るように、水が高い所から低い所へ流れるように、彼は“鷹の目”と称される彼女に睨まれると…

光の庭

甘く、何処からか忍冬が香った。 ロイは探し人の姿を求め、ゆっくりと古びた建物の外周を回って庭へと足を運ぶ。煉瓦作りの壁は目につく限り生い茂る蔦に覆い隠され、過ぎた年月の長さを物語っていた。蔦の壁の角を曲がれば、見慣れた庭の景色が目の前に広が…

mistwhite

軍人の風呂などというものは、大概が烏の行水と相場が決まっている。ロイもリザもそのご多分に漏れず、彼らの日常生活に占める入浴時間というものは非常に些末な扱いを受けていた。そんな彼らの日常に、ある日異変が起きる。往々にしてそんな些細な異変が、…

SSS集 3

突然の 査察先を出ると外は雨。どうやら、空は天気予報の言う通りにはなってくれなかったらしい。車を停めた場所までは、少し距離がある。二人はシトシトと降る雨を見上げ、傘を持たぬ自分たちを省みて苦笑する。「さて、どうしたものかな」「私がこちらまで…

overstimulation

overstimulation:【名】過剰刺激 不意にぞんざいな男の手が、彼女のおとがいを掴んだ。 あと思う間もなく、乱暴に唇が奪われる。 唇越しに歯と歯がぶつかり痛みを覚えるような口付けに、リザは一瞬呆気にとられ、そしてロイの手を振り払うとギッと強い瞳で…

moonlightblue

「ああ、くそっ! 全く無駄な労力だ」ロイはそう言いながらホテルの部屋に入ると、上衣を片手にそのままベッドに勢いをつけて転がった。子供のように大の字に両手を広げて、スプリングの効いたベッドに沈み込む男を呆れた目で見て、リザはゆっくりと部屋の扉…

オンリーありがとうございました!

改めまして、日曜日に当スペースまでお運びいただきました皆様、ありがとうございました。あいにくのお天気でしたのに沢山の方とお会いできて、非常に嬉しかったです。 実は、当日緊張しすぎて朝からお腹を壊していたことや、設営の要領が滅茶苦茶悪く開場直…

if【case 04】

if【case 04】:もしも、私が死んだら * リゼンプールまで足を延ばした国家錬金術師勧誘の道程は、様々な手違いと思いもかけぬ出来事との遭遇で、慌ただしくその幕を閉じた。 老いた憲兵の操る荷馬車に揺られ彼らがリゼンプールの駅に着いた時には、既に陽は…