2016-01-01から1年間の記事一覧

paint over

ピチャリ。静まり返った室内に雫の落ちる音が聞こえた。 その音は高い天井に反響し、すぐに闇の中へと消えていった。 水漏れか。 否。廃屋になった工場には水道は通っていない。 きっと何処かに溜まっていた雨水が漏れているのだろう。 リザはそう考えながら…

if 【case 14】

もし、彼らが同じコンプレックスを持っていたら。 §きっかけは何気ない会話であった。 その日、穏やかな午後のキッチンで、リザは父のお弟子さんに珈琲を淹れていた。 少し曇った空から漏れる柔らかな光が空気の中に満ち、髪を揺らす程度の風が窓から吹き込…

通販のお知らせ

今までに発行した本の自家通販の受付をさせていただきます。各頒布物とも在庫が終了次第、申込の受付を終了させていただきます。各頒布物共に、現時点におきましては在庫終了後の再販予定はありません。 下記の事項をよく読んでいただいた上でご了承いただけ…

星から降る金 サンプル

1.プロローグ ロイがその少年と出会ったのは、彼が二十五歳の時のことであった。 当時、少年は十一歳。 ロイの人生の半分にも満たない時を生きたに過ぎない少年は、彼が錬金術を学び始めた当時と同じ年齢において、とてつもない偉業に手を出した。 偉業? …

Twitter Nobel log 42

2051. ふしだら淫ら私の身体。触れたらそばから蕩けてたわわ。さながら焔(ほむら)の貴方の手から、ひたすら貪る夜はすがらに。2052. ずっと君とは過去ばかり見てきた。これからふたり未来を見ていいのかと少し面映ゆく思う。どちらにしても向かう眼差しの…

Twitter Nobel log 41

2001. 私が怪我をすると怒るくせに、自分の命は省みない。相手を守って怪我をするなら本望だと思っているが、相手が同じことをすることは許せない。似たもの同士の逆しまの鏡。映っているのは、私と同じかおをした恋人。2002. 飴玉を強請る程の気安さで、私…