2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

愛で死ぬなら キスで殺して

表に車が停まった音がした。 男の来訪を思い、リザは急いで窓辺に立ち車種を確認する。 違う。 誰が見ている訳でもないが自分が惨めなるような気がして、リザは背筋を伸ばして落胆した様子を表に出すまいと努め、ダイニングテーブルに戻る。 約束があるわけ…

煙が目にしみる

扉を開けると、紫煙と酒精で飽和した空気が溢れ出る。 ドッと笑い声の上がる酒場の喧騒の中に、ロイは頭一つ飛び出た部下の金髪を見つけ、不機嫌な顔で歩み寄っていく。 「大佐ぁ、すんません」 目敏く(めざとく)上官の姿を見つけ小さく敬礼するハボックを…

あたりまえのように そばにいて

休日明けの朝、ハボック少尉が実家から送ってきたと言って、大量の林檎を持って出勤してきた。 何でも彼の地元の名産だそうで、司令部はたちまち甘酸っぱい香りでいっぱいになってしまう。 出荷できない分ですから、と少尉が言うように、大きさも形も不揃い…

シーソーゲーム

「おい、増田〜。今日も図書室寄ってくのかよ?一歩間違ったらストーカーだぞ?」 「うるさい。黙れ、日渦」 放課後の廊下を悪友にからかわれながらも、増田は足早に図書室を目指して歩いていた。 「一途だよなぁ、お前」 「放っておけ。てか、なんでお前が…

White

ベッドに潜り込むと、リザの足先が遠慮がちに私の足に触れてきた。 あまりにも冷たい足の指が不憫で、私はその爪先を自分の足でサンドイッチにして暖めてやる。 常は甘えることのない彼女が、こうやってすり寄ってきてくれる冬が、私は好きだ。 白いシーツに…