2014-01-01から1年間の記事一覧

overprotectiveness

「目標七五〇メートル。標的、射程内に捉えました」 「了解した。引き続き待機を命じる」 「ラジャー」 必要事項だけを告げる短い通信は、了承の言葉と共に素っ気なくぷつりと切られた。 「さすが、大尉ですね。簡潔にも程がある」 「状況は聞かずとも、スコ…

Twitter Nobel log 33

1601. 物凄い金額の請求書が届いた時に、夜遊びの付けだとか高級品への散財を疑う前に、また本が増えたのかと溜め息をつく私は、ある意味彼に教育されてしまっているのだろうと思う。そしてそれを疑う必要の無いことは、ある意味とても幸せなのだろな、とも…

通販のお知らせ

今までに発行した本の自家通販の受付をさせていただきます。各頒布物とも在庫が終了次第、申込の受付を終了させていただきます。各頒布物共に、現時点におきましては在庫終了後の再販予定はありません。 下記の事項をよく読んでいただいた上でご了承いただけ…

中尉両親馴れ初め妄想 【1】

Twitterで中尉両親の馴れ初めみたいなのを書いた流れで、中尉両親馴れ初め妄想。考察と言うほどのものでもなく、ただ妄想垂れ流しです。一応、パーフェクトガイドブック2の『グラマン中将が中尉の母方の祖父』設定が生きてるものとして(作中には全く出なか…

あれから三年経ちまして(私的なこととWeb再録)

Caution! 以下、現実のとても重たい話です。(サクラちゃんのことです) で、その後に過去のゲスト原稿のWeb再録ありますが、伝奇ファンタジーパラレルの三次創作の上にロイアイが夫婦です。 その辺踏まえた上で、OKな方のみどうぞ。 相方・サクラチハルさ…

Twitter Nobel log 32

1551. 君なら二口、私は一口、皿の上には莓が三粒。食べる速度を合わせるならば、君に一粒、私が二粒。そんな簡単な算数よりも、私は三粒を君に譲る。莓が三粒、笑顔が一つ、少し気障な等価交換。珈琲を飲みながら、私は台所の錬金術を楽しむ。1552. 前、開…

秋の風物詩

『もしもし』 三コールを数える前に取られた電話の向こうから、彼女の好きな甘い声が聞こえた。 「もしもし、こんばんは」 『こんばんは。どうした? 珍しいな、君からこんな時間に』 「御迷惑でしたか?」 『いや。ネットを見ながら飲んでいただけだから、…

星を抱いて 夜汽車に乗って サンプル

1. 二人の乗った汽車が、イーストシティから南に百五十キロ離れた小さな町を出発したのは、日が西に傾きかけた頃であった。 ロイは発車の汽笛を窓越しに聞きながら、無事に予定通りの汽車に乗れたことに安堵する。何しろこの汽車を逃せば、次の最終便が来…

Twitter Nobel log 31

1501. 真夜中の影踏み。すべてが影のような闇の中。ガス灯の淡い光にぼんやりと浮かぶ影を踏めば、曖昧に逃げた君の本当の輪郭が闇に浮かぶ。隠した筈の優しさを顕に私を見る君に誘われ、私も闇に胸襟を開く。本当は捕まえられたのは、私の方なのだと悟りな…

change over time

「それではお先に失礼致します」 デスクを綺麗に片付けたことを確認し、リザはそう言って己の上官の前に立った。 彼女の言葉を受け、ロイは書きかけの書類から視線を上げる。 「珍しいな、君がこの時間に仕事を切り上げるのは」 本気で彼女との会話を忘れて…

Shell White

「もう、行くのか」 微かな灯りに瞼を刺激され目覚めた私は、夢うつつのまま壁に向かってそう言った。 返事はない。 その代わりに、背中越しにふっと身を堅くする彼女の気配が感じられた。 横臥した体勢のまま振り向かずとも、長年の経験から彼女が朝を迎え…

Twitter Nobel log 30

========= ロイアイの日お題 続き =========1451. 「君に言っておかなければならないことがあるんだ」「実は、私もなんです」「君のお気に入りのマグカップを割ってしまった」「実は昨夜のお料理に使った缶詰、仔犬の餌だったんです」「……うん、私の負けだ。…

Twitter Nobel log 29

1401.無駄な自意識過剰。莫迦な自尊心。そんなもので貴方が何から自分を守ろうとしているか、私は知っている。莫迦な自意識過剰。無駄な自尊心。そんなものが私に素直になることを阻むから、貴方は知らないふりをする。無駄で莫迦な平行線を引き続ける私達。…

overheat

「君はもう飲まないのか? エリザベス」 そう言った男は彼女の返事も待たず、彼女のグラスにボトルの白ワインを注ぎ入れた。 彼女は艶然としてボトルの口から垂れる甘い滴をぬぐう男の指先を眺め、そして机上に置かれているもう一本のボトルへと視線をやった…

if【case 12】

もしも、あの世界に遊園地があったなら §「なんだ、これは。珍しいな」 一通の書類を目にしたロイは、それにサインを書き入れながら独り言のように呟いた。 ここ最近は黙々とデスクワークをこなすことの多い准将閣下の呟きに、リザは彼のデスクへと歩み寄る…

give over

「大佐が負傷!? 何があったの?」 「何があったって、いつもの通りッスよ。まーた、あの人最前線まで出て来ちまって」 通信機越しのハボックの報告は少し間延びしていて、ロイの怪我が大したものではないであろうことを言外にリザに告げていた。 それでも報…

Overhead

ソファーというものは、確かにベッドの代わりにはなるけれど、寝返りを打つには狭すぎる。 そんな分かりきったことを確認するように、ロイは身体を縮めるとゴロリと身体を半回転させた。 彼の小さくはない体を納めるにはどうにも寸足らずの疑似ベッドは、彼…

Twitter Nobel log 28

1351.死んだ人を思ってもどうにもならないことは、母を亡くした時に思い知った。両親を亡くした貴方も、そんな感情には慣れているのかと思っていたら、親友という座はまた別格であるらしい。後ろばかり見る貴方に死んだ男を恨んでも、私には手の届かないもの…

帰ってきた軍帽五番勝負! サンプル

この『軍帽十番勝負!』は、一四〇字SSS「大佐、軍帽のつばが、おでこに当たるのですが」 「ああ、すまない」 「大佐、帽子を脱がれると、髪がぺちゃんとして変な頭になっていて気持ち悪いのですが」 「君は私にどうしろというのかね!」 より派生した短…

get over

「こう煮詰まっては能率が上がらん。三〇分仮眠を取るから、時間が来たら起こしてくれ」 そう言った男がさっさと書類を放り出し、ソファーに身を横たえたのは十五分程前のことだった。 彼女に返事をする暇すら与えず、ロイはあっと言う間に小さな寝息を立て…

Twitter Nobel log 27

1301.痛みにしかめる眉の陰影が、貴方の憂いを深くする。踏み込めぬ領域の存在が滲み出るその影に手を伸ばす代わりに、私はたた黙々と彼に痛みを与える傷の手当てをする。せめて、手の届く傷くらいは分け与えて欲しいと願いながら。1302.このサイズの合わな…

Winter Sky

なんだか少し寒い。 そんな意識が夢の中にいた私に目を覚まさせた。 身体を包んでいた暖かな光が遮られたせいだと気付いたのは、目を開いた目の前に人影があったからだ。「すまない、起こしてしまったかな」 父のお弟子さんはそう言いながら、ちっともすまな…

if【case 11】

もしも、あの世界に新年会があったなら §「いやー、やっぱりこれがないと新年始まった気がしないッスよー」 寒い冬の夜気の中、ハボックは上機嫌な顔で煙草の煙を吐き出した。 「これがないと、って、お前ら毎年こうなのか?」 「概ね」 ハボックの前を歩く…

冬コミ御礼&インテ御礼&他いろいろ

一月も半ばを過ぎました。遅まきながら、冬コミ&インテの御礼を。 冬コミはお天気にも恵まれ暖かく、比較的穏やかに過ごすことが出来ました。暮れの忙しい時期にも関わらず、お運び下さった皆様、どうもありがとうございました。沢山の方にお会い出来て、と…

Twitter Nobel log 26

1251.それは恐怖。それは誘惑。それは罪悪。それは情熱。それは無垢。時に銃を握り、時に愛を語り、時に私を叱り、時に泥を被る。それが君の手。私を守る、君の手。1252.寒がりの彼女の背もたれ役を拝領する。普段は甘えてくれない彼女が寒さに負ける冬が、…