中尉両親馴れ初め妄想 【1】

 Twitterで中尉両親の馴れ初めみたいなのを書いた流れで、中尉両親馴れ初め妄想。考察と言うほどのものでもなく、ただ妄想垂れ流しです。一応、パーフェクトガイドブック2の『グラマン中将が中尉の母方の祖父』設定が生きてるものとして(作中には全く出なかったので、まったく扱いに困る設定ですが)書いていきます。以下、年号はすべてアメストリス国のもの、( )内は一応公式の出典。
 だらだら行きますので、お暇でしたらお付き合い下さい。
 

■基本設定
 ロイが1885年生まれ(パーフェクトガイドブック3より)、リザの誕生年はおそらく1889 or 1990年生まれ(牛先生が昔BBSで中尉は24〜25歳くらいと記述されたところから逆算)。故にホークアイ夫妻の出逢い、結婚は出来婚でない限り1888年以前となります。
 この時代は、まだブラッドレイが大総統になっていない(ブラッドレイの大総統就任(44歳)は1894年〜1896年の間(クロニクルより))ので、国家錬金術師というシステムはない(国家錬金術師というシステムがアメストリスに出来たのは、ブラッドレイ時代(クロニクルより))けれど、国家として錬金術研究施設は所有している(金歯の存在)という感じでしょうか。
 グラマン中将がセントラル勤務か、既にイーストシティに左遷済みかが微妙なところです。レイブンの申し出がいつの頃の話か描写なかったように思うのですが。おそらくまだセントラル勤務してそうかなとは思うのですが如何なものでしょうね。(左遷は「ゴタゴタとうるさい東部問題の尻ぬぐい」(コミックス16巻)と言っているので、イシュヴァール殲滅戦後の可能性もなきにしもあらず?)
 ついでに、イシュヴァール内乱勃発が1901年で大佐16才、中尉10〜11才の時。ホークアイ師匠死亡はこの数年後と推察します。

 ついでに書いておくと、クロニクル発刊前は『ホークアイ師匠が国家錬金術師を目指していた説』も、一つの可能性として考えていました。
 国家錬金術師目指す理想に熱く燃えるホークアイパパと、優秀な錬金術師を推薦して立場アップを目論むグラマン将軍。利害一致して、二人つるむ。つるんだついでに、グラマン公認で娘さんとお付き合い。結婚、妊娠、リザ誕生と目出度い続きと思っていたのに、グラマン東部に左遷。元々身体弱い深窓の令嬢だったグラマン娘、リザ産んで更に病弱になってて、東部の気候が身体に触り死去。ブラッドレイと袂分かったグラマンにとって、ホークアイ師匠は錬金術師としても婿としても用済み。忘れ形見のリザを引き取る引き取らないで揉めるも、リザが父親を選んだので以後グラマン家とは関わらないことを条件に決別。(リザ幼すぎて、この頃のことは記憶に無し)
 ぽしゃりました、残念。

 というわけで、練り直した案をちょろっと。あと、ずっと温め続けてた(笑)とんでも説(酷いので、温め続けるしかなかったともいう)とか。概ねグラマンが腹黒です。
 みんな大好き駆け落ち説もありかなーと思うのですが、ホークアイ師匠本名で東部に暮らしてるので、駆け落ちなら変名とかもうちょっと隠れるとかしないかな? と思って、自分的にはなしになってます。
 まぁ、もう連載終了四年目突入ですから、こういう考察は出尽くしているでしょうし、今更ではありますがお付き合いいただければありがたいです。矛盾や私がうっかり忘れてる設定あったらご指摘下さると助かります。

■仮説その1:ホークアイ師匠、金歯の部下だった説
 憤怒のラース作成後、アメストリスはプレ国家錬金術師制度を敷いた。真理の扉を開ける人材を1914年に合わせて作成する為に国全体の錬金術のレベルを上げる為、不死の軍団作成の為、どのくらいの確率で真理の扉を開けることの出来る逸材が存在するか調べる為、など目的は多岐に渡る。後にこの制度が、国家錬金術師制度へと繋がっていく。(ここまで大前提)
 理想に熱く燃えこのプレ制度に飛びついたホークアイパパ。しかし、実態は人間を人間とも思わぬ様々な所行が為されていた。意気消沈し、心を殺し、これも国の為と実験に励んでいたホークアイパパの前にグラマンの娘が現れるわけです。文章化するなら、こんな感じでしょうか。

 扉が開いた瞬間、ホークアイは顔を顰めた。勿論、暗い中で実験を続けていた目に陽光が眩しすぎたのも、彼の表情の変化の理由の一つではあった。だが、絶望を常の友としてから表情に乏しい彼にとって、それはかなり大きな感情の揺れを示すものであった。実験室を出た彼の目の前に、見たこともない少女が立っていたのだ。
「すみません、こちらにグラマン将軍はおいででしょうか?」
 至極申し訳なさそうでありながら、彼の渋面に対してもまったく物怖じせぬ凛とした声が彼の鼓膜を打った。彼はその言葉に更に渋面を深くした。絶対に一般人が訪ねてくる筈のないこの場所に、如何にも良家のお嬢さん然とした少女がいる不自然が彼に警戒心を抱かせる。だが、少女は困ったように小首を傾げ、彼がまるで信頼に値する人間だと信じているかのように再び問いを発した。
「あの、グラマン将軍がこちらにいらしていると伺って参りましたのですが、将軍がおいででしたらお会い出来るようにお取り次ぎ頂けますか?」
 まったくの無防備な少女の鳶色の瞳が、無垢故の真っ直ぐさで彼を射貫いた。金の髪が夏の木漏れ日のようにきらめき、彼は自分が少女から目を離せなくなったことを自覚した。

 まぁ、この出会いは勿論グラマンの差し金であるわけです。急に錬金術師を重用し始めた国家の一端を探るべく、下っ端に娘を近づけてみる作戦。娘は勿論何も知らず、下っ端ホークアイ父は久しぶりの眩しい外の世界=希望=グラマン娘に惹かれていく。
 眩しい存在を得、今の己の所行を鑑みて、ホークアイ父は「このままじゃいかん」と再び熱い青臭さを思い出したりするわけです。錬金術の可能性とは。己に出来ることは何か。非力な自分でもこの可憐なお嬢さんを守る術はあるのか。そして、彼は秘密裡に強力な兵器としての焔の錬金術の研究にのめり込んでいくのです。
 グラマン娘も(良い意味でも悪い意味でも)俗物の父親に感じていた嫌悪の裏返しのような、浮世離れした青臭い錬金術師に惹かれていきます。この軍事国家で「錬金術は大衆の為に」とか本気で言っちゃう痛い人です。でも、その夢に彼女は一緒に夢を見てしまいます。
 惹かれ合った若い男女に何が起こるかなんて、言うまでもがな。二人は身体を重ね、まぁ、こっちは全年齢なんで朝チュン行きますか。

 朝だ。
 眩しい陽光に目蓋の下の眼球を刺激され、ホークアイはベッドの上に身を起こした。半分だけカーテンを引いた窓からは、昇ったばかりの太陽が遠慮がちに淡い光を室内に注いでいる。こんな人として真っ当な時間に眠り、朝陽と共に起きるだなんて何年ぶりだろう。ホークアイは不健康に細い己の腕をさすりながら、金色の陽光に目を細める。
 普段ペンより重いものを持つことのない彼の腕は、愛しい重みを抱いたことに少しの疲労を覚えていた。それは、昨夜のことが夢ではなかったことを彼に教えてくれる。彼は幸福な現実を確認するように、恐る恐る背後を振り向いた。
 そこには真っ白なシーツの上に、陽光よりもずっと眩しい金の髪が天界の波のようにふわふわと広がっていた。長い髪の持ち主は昨夜の疲労のせいか、クゥクゥと愛らしい寝息を立てて未だ眠りの世界に遊んでいる。彼女を飾り立てる全てが取り払われてなお、少女はその存在だけでやはり彼にとっては陽光のように眩しく美しく思えた。
 ああ、夢ではなかったのだ。ホークアイはそう思い、幸福を噛み締めながらその金色の髪に指を絡めた。絹糸のようなそれは彼の指からするりと逃げ出し、幸福の中に微かな不安を彼に覚えさせる。
 迷いながら、恥じらいながら、それでもようやく彼女は彼の腕の中に舞い降りてきてくれた。そんな彼女を手放して生きて行く人生を、彼は考えることさえ出来なかった。自分の立場を考え、彼は強い焦燥を覚える。
 早く。早く、焔の錬金術を完成させなくては。
 軍内部においても屈指の有力者である彼女の父親、グラマン将軍に認められるほどの力を得なくては。
 ホークアイは彼女のひと房の髪に口付けながら、己の決意を新たにしたのだった。

 良いですよね、朝チュン。(ロイアイで朝チュンは書いたことがない気がするので、今度挑戦したい、朝チュン。胸キュンからドロドロまで、様々な夢と絶望が広がる朝チュンワールド)
 で、まぁ、やることやったら出来るわけです、子供が。
 リザママご懐妊。勿論父ちゃん大激怒。折角、政略結婚の縁談組もうと思ってたのに、どこの馬の骨ともしれん男に傷物にされたんですから、そりゃ怒ります。怒るくらいなら下っ端に近づけなきゃ良いんですが、彼は自分の娘が引き籠もりの錬金術師に惹かれるなんて想像もしなかったのです。世間体と縁談相手への体裁の為、リザママ勘当。(私の脳内では、グラマンは人を駒として動かす冷酷さを持った上昇志向の人です。なので、マスタングや自分の娘も己の政略の為なら平気で利用し、必要とあらば躊躇無く切り捨てます)
 更に悪いことに、彼女の懐妊とその相手が誰かまでが人々の知るところとなります。ホークアイパパ、軍の要人の娘を傷物にしたことでクビ。ただ、ホークアイパパにとって幸運だったことは、『お父様』の秘密に触れるほどに出世していなかったので、殺されることなくクビですんだこと。そして、将来的に味方に取り込もうと思っているグラマンの(勘当されたとは言え)娘婿であることで、軍部側は彼を簡単に殺害できなくなったこと。
 そして、若い二人は本当に二人きりで生きて行かねばならなくなります。
 スキャンダルの広まったセントラルでは、彼等に安息の地はありませんでした。彼等はほぼ身一つの状態で、東部へと逃げるように移住します。スプーンより重いものを持ったことのないリザママも、手にあかぎれ作って頑張りました。お腹の子の為にも、弱音なんて吐いていられません。母は強し。ホークアイパパも完成間近の焔の錬金術の研究を続けながら、愛するお嬢さんとこれから生まれてくる子供の為に頑張りました。お金はなくても愛しい人がいる幸福を噛みしめ、彼等は束の間の蜜月を過ごしたのでした。

 やがて待望の子供が誕生し、彼等はますます深まる幸福を噛みしめます。母親にそっくりの娘に彼等はリザと名を付けました。いつかは、グラマン将軍にもこの子を会わせて、おじいちゃんになったのよって言ってやるの。そんな他愛もない会話が幸福の元に語られるほどに。その頃には、ホークアイパパの焔の錬金術の理論もほぼ完成に近づき、彼等は小さな幸福の天辺で夢のような日々を送ります。
 しかし、破滅は優しい時間の裏側で着々とその長い爪を彼等に向かって伸ばし始めていました。慣れない東部での暮らし、深窓の令嬢には想像もつかない貧乏、誰も頼る人のない中での出産と育児。か弱いリザママの肉体は、静かに静かに疲弊していきます。
 夫に心配をかけまいと気丈に振る舞うリザママ。彼女に楽な暮らしをさせてやりたいと焔の錬金術の完成のため研究に没頭するホークアイパパ。互いの想いは裏目裏目となり、春先の湖の氷のように彼等の幸福には見えないひびが入っていきます。

 そして、遂に破滅は彼等の前に姿を現しました。
 なんの前触れもなく、彼女が天に召されたのです。幼い娘を置いて。寂しがり屋の錬金術師を置いて。さよならを言う暇さえ与えられず、暗い台所の片隅で。
 焔の錬金術が完成し喜びの頂点にいたホークアイパパが彼女を見つけた時、彼女は既に氷よりも冷たくなっていました。彼は幸福の絶頂から、地獄へとたたき落とされます。研究に没頭するあまり、死後何時間も愛する人を暗い場所に放置してしまった自分をホークアイパパは責めました。お腹を空かして泣き続ける娘に気付かなかった自分を責めました。愛する人を失っては、完成した焔の錬金術もなんの意味も持ちません。ホークアイパパは絶望し、そして遠い昔に自分が絶望しながら生きていた日々のことを思い出します。
 そう、彼はリザママと出逢うまでは絶望の中で生きていたのです。軍の研究所という施設の中で。人体錬成の研究をしていた場所で。
 人体錬成。
 彼は思い出します。焔の錬金術は彼の私的な研究であり、彼の所属していた施設で行われていたのは人体錬成の研究だったのです。勿論、そこにいた当時彼は下っ端でしたから、人体錬成で不死の軍団が作られていたとは知りませんでした。ただ大前提にも書きました通り『どのくらいの確率で真理の扉を開けることの出来る逸材が存在するか調べる為』という目的のある組織であった為、彼も人体錬成の研究を行わされていたのです。
 彼は夢中になって、あの施設を放逐されるまでに自分が行っていた研究を発掘します。彼の人生に光をもたらした人を生き返らせる為、幼い娘に母親を取り戻す為、彼は完成されたまま封印していた禁断の理論に手を付けてしまったのです。
 
 結果的に彼の術は失敗します。不完全な記憶を元に焦燥を持って行われた彼の術は、真理の扉まで到達することは出来なかったのです。彼は己の無力さに打ちのめされます。彼は思考を停止しました。こうして錬金術師としての彼は、死んだのでした。
 しかし、彼に絶望して座り込んでいる暇はありません。愛しい人の残した忘れ形見を彼はきちんと育てなければなりません。娘の為に残せるものは何か。しかし、彼に出来ることはさほどありません。娘が一人でも生きていけるようにきちんと教育を施し、自分の遺産として焔の錬金術を受け継がせる。それが、彼に出来る唯一の娘への愛情表現でした。彼の歪んだ愛情を是正する人は、この世には誰もいません。
 更に悪いことに貧乏暮らしと不健康な生活は彼の妻だけでなく、彼自身の身体も蝕んでいました。ある日彼は血を吐き、自分がもうあまり長くはないことを悟ります。彼は己の研究を受け継ぐ人材を捜しました。そんな彼の元に、ある日近くに住む青臭い理想を持った少年がやってきたのです。彼の弟子になりたいと言ったその少年の名は、ロイ・マスタング。いつかの彼と同じように理想に燃え、国家錬金術師になりたいと願う純粋な少年にホークアイパパは過去の自分の姿を重ね、そして彼を己の弟子にしました。
 そして、彼が妻の元へと旅立つ日、若い二人の物語は幕を開けたのでした。

  ============= 仮説その1 【完】 ============

 だらだら書いて、すみません。とりあえず、ざっとこんな粗筋です。物語として書くならば、ラストは軍に入ったリザさんを目にしたグラマンの独白で終わるのが良いなと思います。

レベッカ!」
 そう広くはない廊下を歩くグラマンの耳を、懐かしい声が駆け抜けていった。窓の外に目をやれば、今年入ったばかりの新兵の一団に追いつこうと走っていく金色の髪をした少女がいた。それは忘れようとして忘れられぬ、彼の愛娘の姿であった。
 グラマンは一瞬目を見張り、そして己の愚かな感傷を笑った。
 彼の娘は死んだ。あれは彼の孫娘だ。
 孫娘が軍に入ったことは調書で知っていた筈なのに、やはり実物を見ると狼狽えるものだと、グラマンは胸の内で妙な感心をした。
 かれはじっくりと孫娘の姿を眺める。声も、顔も、何もかもが彼の娘と生き写しであった。
 血は争えないものだ。グラマンは感傷を振り払い、傍らを歩く補佐官に尋ねる。
「今の子、誰?」
 補佐官は手元の書類をぱらぱらと捲り、すぐに彼女の履歴を探し出した。
リザ・ホークアイです、今度マスタング少佐の補佐官に任命された新兵ですね」
マスタング君? あの錬金術師のかね」
 グラマンはそう言うと、思わず吹き出した。
 また錬金術師か。まったく、血は争えないものだ。
 グラマンはクツクツと笑いながら、笑わない目で虚空を睨んだ。突然笑い出した上官に、彼の補佐官は何事が起こったのかと慌てた様子で書類を閉じた。
「何か問題でもございましたでしょうか?」
「いーや、何にも無いよ。あんな可愛い子を副官にしたんだから、マスタング君にはますます頑張ってもらわないとね」
「また何をおっしゃっておいでですか」
 上官のセクハラにほとほと困っている補佐官は、また上官の悪い癖が出たと溜め息をついている。グラマンは補佐官の誤解を解くことなく、にんまりと笑った。

 こんな感じで。
 きちんと物語にしたら、100pくらいのオフ本になりそうです。ほぼオリキャラの物語なので書くことはないと思っていたのですが、こうして粗筋だけでも日の目を見てちょっと嬉しいです。
 きっかけを頂いたぬこさん、ありがとうございました。

 仮説1終了、次は「とんでも説」いきます。こちらはSS形式になりますが、本当に誰も喜ばない話になると思います。ロイアイ絡みですが、私も思いついたまま四年以上放置してた話なので。

   【2】へ続く