Black out

今月号ネタバレ鬱っぽいSSS&感想です。
OKの方のみ、スクロールでどうぞ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
【Black out】
リバウンドだ。
何の脈絡もなく、そんな言葉が頭に浮かんだ。
それは思考によってもたらされた結論ではなく、錬金術師としての脊髄反射のような直感だった。
分解される己の身体は、量子レベルでの己の存在を身をもって理解させようとするかのごとく、ぱりぱりと音を立てて解かれていく。
叫ぶ彼女の姿、キメラたち、冷徹な表情のホムンクルス、それらを視界に確認できたのは一瞬。
ブラックアウト。
彼の視界は暗転する。
 
ホワイトアウト
突然放り出された世界は、一面真っ白の世界。
なんだ、ここは?
自分が何をしていたのか、思い出せない。
一体何故こんな場所にいるのだろう?
疑問符が彼の脳裏を埋める。
『無駄な抵抗など、せねばよかったものを』
背後からクツクツと忍び笑いが聞こえる。
彼と同じ声、同じ口調、同じ笑い方。
彼は戦慄する。
「誰だ!? 貴様は!」
『分かっていながら聞くのかね、まったく』
仕方がないといった口調で、“それ”は答える。
『そうだな、分かりやすい言い方をするならば……私は神。私は世界。私は真理。私は全。私は一。そして、私は“君”だ』
人の形をとりながら、人にあらざるもの。
彼の影の存在、人の存在を形作る存在、世界の構築式。
まさか、そんなことがあり得るというのか!
錬金術師とは生きている限り真理を追い求めずにはいられない生き物だ、君の師匠はそう言ったのではなかったのかね』
「何故、それを貴様が知っている!?」
『知りたいのだろう?』
そう言った“それ”の背後に聳え立つ扉には、彼女の背の秘伝と非常によく似た文様が刻み込まれている。
呆然と立ち尽くす彼に“それ”は笑いながら言う。
『見てきたまえ。君たちが望んだ、これが真理だ』
厭味なほどに高圧的な声音。
彼が血の滲むような思いで解読した秘伝を割り開くように、扉の隙間から這い出た黒い触手が彼を襲う。
 
ブラックアウト。
流れ込む膨大な知識、暴力的に捩じ込まれる情報。
なんだ、これは?
渦巻くように走り去る景色、すべてが意味を持ち、すべてが世界を形作る。
彼は国家錬金術師として、それなりに優秀な錬金術の使い手としてこの世に存在していた。
彼女の背の秘伝を読み解き、師匠の技を受け継ぎ、それなりの知識をもち、研究も怠らず日々研鑽を重ねていた。
彼が己の知識と自負していたものは、何とちっぽけなものだったのだろう!
満ちる知識、満ちる光。
世界の果てに似た場所に、もう少しで手が届きそうだ。
師匠の目指したもの、彼女の伝えたもの、彼の欲したもの、その向こうの……!
 
そしてまた、ホワイトアウト
戻ってきた扉の在り処。
彼は自失する。
彼の想像を凌駕する知識、真理……真理?
目の前に立つ、“それ”は……真理?
姿が見えぬというのに“それ”が笑っていることが彼には理解できる。
そしてまた現れる触手。
扉の隙間から現れる無数の、絶望の、恐怖の、手。
彼は理解する。
等価交換の原理を。
 
そして、ブラックアウト。
完全なる闇、暗転、投げ出される肉体。
すべての消失。
後はもう、何も見えない、闇。
暗くて深い、黒。
 
ブラック アウト
 ********
 自分が、これほどまでにロイ・マスタングが好きなのかと殴られたような勢いで思い知らされています。先々月のリザさんの危機の時よりも、激しいショックを受けている自分に、自分でも驚いているほどです。
 リクの若ロイ仔リザも7割がた書きあがっているのですが、どうにも続きを書くことができません。というか、何も書けないです。落ち着くまで、更新止まります。ごめんなさい。
 吐きそう、でも働く。(12/12 8:00am)
 
 と、まぁ、朝の時点では書いたんですが、激務終わったら少し落ち着きました。更新はぼちぼちいきます。やっぱり、現実逃避には書くしかないんです。字書きだから。でも、今日程冬コミの原稿が終わっていて良かったと思った事はないです。
 今日はサクラ嬢に会いに行く予定だったのですが、仕事とか諸事情で延期。で、ガンガンの内容に触れつつメールのやり取りしてたんですが、以下、彼女のメールより引用(引用許可もらってます)

>今月のガンガンもえげつないです。
>私、しばらく更新出来ひんてか、何も書けへん。orz 自分がこれほどマスタング好きとは、思わへんかったよ。
…そういう内容なんだ…。
てか、それほどマスタング好きだと私は前から知ってたよ…

そうか、知られていたのか…… 思わず吹き出して、ちょっと元気でました。帰宅したら、Sさんからありがたいコメントで喝を入れていただき、もうね。ロイアイ好きな仲間がいるって、心強いなと。
 ロイの失明と言うショックは薄れないけれど、牛神様を信じて頑張る。とりあえず、本誌は見ない振り。
 
 これだけじゃ何なので、珍しくきちんとネタバレ感想。
 私は、キンブリーを取り込んだプライドが人体錬成陣発動するんじゃないかと思ってたんですが、キンブリーじゃなくて金歯でしたね。じゃ、まだキンブリー取り込みの伏線は何処かで回収されるのでしょうか?
 ロイの真理の扉はリザの秘伝の絡み合う蛇? 真理の扉も人によって模様が違うのでしょうか。エルリック兄弟のは、セフィロトの樹でしたものね。しかし、今回のアルとアルの対面も切なかったです。あそこで皆の元に戻るアルの『こんな身体じゃ戦えない!』に、ぐっときました。
 しかし、アニメ一期から通行料=左目と予想していたのですが、まさか失明とは。もうショックで、涙出そうになりました。彼にはきちんとイシュヴァール戦の償いを、彼自身の手で成し遂げさせてあげて欲しいです。うう、好き過ぎて苦しい。もう、毎号ガンガンが苦しい。牛先生、ハンパないっす。
 今回の本誌を読んで、つくづく自分は歴史や運命や時流に翻弄されながらもそれに抗い、目的の為に歯を食いしばって戦う(相手が人であれ、運命であれ)人に魅かれるのだと感じました。ロイもリザもそういう人であり、その中にストイックに愛情を隠し持ち、背中合わせに立つ彼らだからこそ、好きなんだと。ほんと、もう何を今更なんですけどね。
 本当に本当に心から、彼らの行く末が光に満ちたものである事を祈ります。