2007-01-01から1年間の記事一覧

07.冷笑

唇の端を歪めるその形 人はそれを笑いと呼ぶ * ここに来て、もう何日が経ったのだろう。もう、何人の人間を殺したことだろう。 私、リザ・ホークアイは自問した。 様々な感覚が徐々に鈍化し始めているのが、自分でもよく分かった。 実地訓練として参加したイ…

03.無能

敵わないから貶してみせる 裏返し 裏返し * せっかちに、ドアをノックする音が聞こえる。 今夜は来るだろうと思っていたが、こんな早い時間にとは思っていなかったので、何の準備も出来ていない。 躊躇っている間も、ノックの音は止まない。 このままでは近…

oversweet

oversweet:【形】 甘すぎる * 「気持ち良いか? リザ」 「はい」 大佐の指が滑らかに動き、私は思わず恍惚とした微笑みを浮かべてしまう。 大きな節のたった指先は意外にも繊細で、毎回の事ながら私はあまりの心地良さに夢の世界に飛び立ちそうになる。 「こ…

20.この身朽ちるまで

思いがけず思い出す 過去と今 * 「大佐、折角のお休みの日に申し訳ありませんでした」 「何、いい加減錬成陣以外のものが見たくなっていた所だ。ちょうど良かった」 普段はめったに見せない無精髭を生やした顔で、ロイは笑った。 国家錬金術師の査定のペーパ…

13.花一輪【07.Side Roy】(完結)

この胸に咲く花は 貴方 * 「リザ、君は」 私の言葉は、彼女には届かない。 何故なら、リザはベッドの上で無防備に眠り込んでいるのだから。 瞳を閉じた彼女を起こさぬように、そっと髪を撫でた。 首筋に覗く秘伝が、私に様々な事を思い起こさせる。 私の指先…

13.花一輪【06.Side.Riza】

実らず枯れる花の 哀しさ知らず 一人 * 「私は明朝、軍に戻らなければならない。準備に少し時間がかかるかもしれないが、必ず迎えに戻るから。待っていてくれるね?」 何を言い出すのだろう、この人は。 彼の腕の中で、私はあまりと言えばあまりな男の身勝手…

13.花一輪【05.Side.Roy】

刹那を見る女 未来を見る男 どちらの胸にも散って消えた 花一輪 * なるべく冷静に振る舞おうと心がけてはいたが、私の心中は様々な思いで溢れかえっていた。 私には彼女の言う所の幸せが、理解出来なかった。 好きな男に抱かれる事、確かにそれはそうなのだ…

13.花一輪【04.Side.Riza】

摘まれる為に 花は咲く * 気が付けば、自分でも驚くほど饒舌になっていた。 分かってもらおうとも、分かってもらえるとも思っていない、なんて嘘だ。 独りの夜は明けないのかと思う程、長い日もある。 無い物ねだりと分かっていても、誰かに知っていて欲しか…