Twitter Nobel log 20

951.
言葉より雄弁な彼女の眼差しが欲するものを探して、今日も脳細胞を酷使する。言ってくれれば簡単なものを毎度推理しろだなんて、実はとんでもない我が儘だと彼女は分かっていないのだろうか。なぁ、すました副官の顔をした、困った私のお姫様?

952.
彼に想いを向けていること。彼から想いを向けられていること。どちらにも、自覚はある。無いのは覚悟だけなのだ。

953.
彼に想いを向けていること。彼から想いを向けられていること。どちらにも、自覚はある。その上で、敢えて目を背ける覚悟を持った。それが、私。それが、私たち。

954.
銃を撃つ、小言をたれる、書類を捌く、室内履きで歩く、身を切る溜め息、食材を切る、銃を分解する、仔犬を躾ける、この手の愛撫に応える、軍靴で歩く、バレッタを留める、切ない吐息、堅い報告、身じろぎの衣擦れ、彼女の水音、ドアノブを回す手。こうやって、私は一日中彼女の奏でる音を聴いている。

955.
眠りたい。柔らかな褥とは言わない、堅い木の床でも、冷たい石の床でも構わない。ただ、此の身を横たえる場所を欲す。安らぎを求める場所は傍らにある筈なのに、私からの距離は最果て。

956.
「過剰に誉めると、使い物にならなくになりますよ?」「良いじゃないか、それだけの働きをしたのだ。それに、私も時には使い物にならなくなる程誉められてみたいものだしね」「等価交換ですか? 莫迦みたいに分かり易い人ですね」「君ね…」「誉めてます」「それで?」「これで」

957.
残業のモチベーションを保つのに、難しい理屈も高額の残業代も意味は無い。君の淹れる三杯の珈琲、その程度で自分を騙して、後一時間は保たせてみせよう。その程度で操れる上官を持って、君は十分幸福だと思わないかね?

958.
まだ星の残る朝焼けを見上げ、家路を急ぐ。疲労よりも事件が解決した安堵の大きさが優り、知らぬ間に私の口元に小さな笑みが浮かぶ。ふと隣を見上げると、目の下に隈を作ったヨレヨレの彼の口角も私と同じ満足の笑みを浮かべている。消え行く星々の瞬きさえ眩しく、私は笑みを深めて目を伏せる。

959.
このダブルベッドは、私たちには狭過ぎる。彼の腕枕を避けて寝る場所が、私に残されていないなんて。

960.
壁際に追い詰めるまでもなく、籠の鳥。そんな目をしても、私は優しくないから君に逃れる術はなし。君の為のこの心地好いシーツの上のスペースを受け入れない限り、君に安眠は訪れない。そうなると、明日の仕事に差し障るとは思わないかね、優秀な私の副官殿?

961.
息苦しさに目覚めるのは、此の手に余る存在に対する責務。安らぎにも、錘にも感じるのは、結局は己の生き方と心情なのだと闇に目を閉じる。息苦しさは『生き苦しさ』なのだと、分かち合えぬものを右手に、彼女を左手に抱いて、眠りの世界を覗き込む。

962.
どうにもならない局面でも、なんとかなるさと彼が笑う。なんともならなくても、なんとかしようとする彼だから、不安という名の最初の敵を屠り、その笑顔に騙されたふりで前を向く。

963.
足が覚えた帰り道、溜まる疲労に曲がるべき角を曲がらず無意識に直進した私は、ぼんやり彼の窓を見上げている自分に気付く。いつの間にこれほど飼い慣らされてしまったのかと自嘲し、私は踵を返す。素直に呼鈴を鳴らす程には、疲労はまだ私を蝕んでくれてはいないらしい。ただ、窓の灯りが優しい。

964.
見上げた窓の灯りを思い出し、胸に小さな仔犬の温もりを抱える。温かさも、愛らしさも、素直さも、優しさも、この仔の方が絶対的に勝っているのに、私の心は傍若無人な抱擁と、私を背後からまるごと包み込んでしまう包容力を渇望している。埋まらぬ隙間を埋めようと、私は仔犬をギュッと抱きしめた。

965.
背骨の代わりに空薬莢を積み上げて、私の身体を作り上げる。私に命を吹き込むのは、貴方の肋骨。貴方の心臓を守る骨が、私を創る。だから私は女である自分から逃れられない。貴方に罪をもたらす原罪の存在。

966.
言うのはただだから、いくらでも愚痴なんて言えばいい。なのに君はそれすら口にしない。沈黙が金とは言え、その比重が重すぎて、時に君が沈んでしまうのではないかと思うのは、私の杞憂だろうか? 心配の方向が変わるだけなのだから、いい加減気兼ねは止めるべきだと思うのに、君にはそれが通じない。

967.
感情を殺すな。見えないものを信じるな。目の前のこの背中だけを見据え、その目に映るもので判断し、君の思考で動け。信じてはいけない、この私すら。それが君に課す、私の信頼。

968.
"I belong to the armed forces." "I belong only to you." The difference in just a few words changes even the temperature of my heart.

969.
脳味噌の餌に、朝から顔より大きなチョコリングを食べているなんて。お口の周りのチョコレート、おやつを奪われた恨みを私に忘れさせる作戦なら秀逸だと笑いを堪え、本を手放さないお莫迦さんの為に、私は今日も朝から熱い珈琲を淹れる。

970.
シュガー、シュガー、ハニー。そんな調味料程には甘くなれないが、同じ方向を見て笑っていたい。フライパンの中身が私の好物で、疲れた夜はそんな事実にすら胸が詰まる。道程は遠く、我々は難しい顔をして未来を眺めるしかないけれど、それでも夕食の皿の中身を眺める時はせめて笑顔で。私のシュガー。

971.
例えば、父親に寝かしつけてもらった思い出等と言うものを持ち合わせない私に彼が差し出す腕枕は、甘ったるい過去の代替えなのかと思っていた。でも、最近それが彼も求めているものなのだと知った私は、それがおやつではなく主食である事に安心し、塩辛い皮膚に舌を絡める。人生のスパイス、私のソルト。

972.
透明な檻の中に閉じ込める。出るも自由、離れるも自由。鍵なんてかかってもいない。それでも出ることが出来ない檻の名は、罪悪感と責任感と依存心と情愛と、その他様々な感情を捏ね回した我々の心。自ら扉を閉めて鍵を掛けたふりで、それでも傍にいたいだなんて。

973.
髪を結う指先程には器用に動かぬ彼女の唇が、言葉を紡ぎかね戦慄く。口を瞑り待つことしか出来ぬ私の視線が雄弁過ぎて、ますます彼女は口ごもる。目を閉じ、口を閉じ、耳も閉じたなら、彼女はその唇を開いてくれるのだろうか。私が受け取ることの出来ぬ言葉を吐き出す為に。

974.
私が知らなくていい事は黙っていて。私に知っていて欲しい事は口に出して。そうすれば、私は貴方が言葉にしないものを、見ないふりでやり過ごすことが出来る。たとえどれほど焦がれても、貴方が共犯者なら、この心さえ騙し通すことが出来る。だから、プリーズ・サー。私の心に目隠しをください。

975.
カムフラージュの恋人のふり。背後に迫る気配に抜き撃ちの一発は、彼のショルダーホルスターから引き抜いた拳銃で。抱き合うふりも、口付けのふりも、彼の懐から拳銃を取り出す為の演技。路地裏の小劇場、本当は私の心を隠す演技だと彼にはとっくに気付かれている。硝煙の匂いを纏い、本番はこれから。(インテペーパーの元ネタ)

976.
焔を生む手で私に触れないで。引き金を引く手で貴方に触れたくないから。等価交換はプラスの方向だけではなく、マイナスの方向にも成り立つ残酷に平等な法則であることは、貴方が一番よくご存知でしょう?

977.
時代が悪かったのだと言われても、選べぬものに責任を擦り付けるよりは、彼女と巡り会う時代に存在する己を寿ぎ、私は軍靴の踵を鳴らし粛々と私の生を行くことを選ぶ。罪も懺悔も誰にも譲らぬ、すべて己の手で墓の中まで。

978.
吃驚するくらいヘタクソなキスは彼女の恋の拙さそのもののようで、莫迦な男に引っ掛かった可哀想な女の未来の明るさを祈り、私は技巧の限りを尽くした口づけを返す。願わくは、彼女が口づけが甘いものだと知る日が来るように、と。

979.
例えば、食欲を意思の力で飼い慣らし、生き残る為に食べることを己に課す。どれだけ悲壮な現場を見ようとも、身体が私に反乱しようとも。彼と共に在る為の約束は、私の本能すら支配する。

980.
雷よりも怖いもの。甘い花束、綺麗なお菓子、逸らさぬ貴方のその目線。無風地帯に嵐を起こす予兆に怯え窓を閉め、見ないふりの路地裏の影を想ってしまうから。

981.
こんな歳になって、この指先を君の何処に触れてよいものか躊躇う私がいる。こんな私を、君は莫迦だと笑うだろうか?

982.
こんな歳になって、この指先を君の何処に触れてよいものか躊躇う私がいる。こんな私を莫迦だと笑い飛ばしてくれる、君が愛しい。

983.
努力もなしに彼女が傍らに居てくれるなんて、これっぽっちも思っちゃいないのさ。どんな査定より厳しい父親譲りのあの眼差しに、私は人生の指針を見据えるのだから。背後に従え歩く気配に、今日も私は背をただす。

984.
雨の木琴が奏でる休日のリズムに、鼻歌を重ねる彼を見つめる。有能である必要も無能呼ばわりされる理由も持たぬ、ただの男を目の前に、私は昔と同じように甘い林檎を煮詰める。この閉じた世界以外、何も欲さなかった昔と同じように。

985.
欲しいのは支配と従属ではなく、尊敬と包容。 例えば、手を繋いで並んで歩くような。でも、そんな恥ずかしいことは口に出せないから、私達は各々の武器を手に互いの背を守り、私達の負うべき戦場を生く

986.
甘いものをご所望ならば、他の女を当たって下さいと君は言う。君がくれるのが苦い関係しかないというのなら、私には重畳。大人の嗜好にはちょうど良い、苦みの勝つビタースイート。甘さなど後朝の背中に隠す寂寥程度で十分だろう?

987.
いつもと違う視線の温度に心拍数が上がる。私を裏切るもの、それは私の心臓。

988.
ベッドの端と端で背中を向けあって眠る。さっきまで重なっていたとは思えぬ余所余所しさで。同じベッドで眠る理由さえ、疲労だとか面倒臭さだとか、負に傾く。それでも、朝までは傍らにその体温がある事実に、少しだけ安堵して眠る。

989.
この指先をその背に触れたいのかと問われた時、Noと言えば嘘になるが、Yesと言うには私の自制心は強過ぎる。ならば、その背の為にこの指先をトリガーに重ねる。それが私の感情表現。

990.
感情に名前をつけるから面倒なことになるのだと、この視線の行く先を無視して生きてきた。この先も、この感情に名前を与える気はないけれど、それでもこの視線の行く先は変わらないままだろう。きっと、一生涯それだけは変わらないだろう。私はその事実に、ただ満足するのだ。

991.
ベッドと壁の隙間に落ちている可愛らしい人を救い出す。この国で一番偉い人の筈なのに、こんなところでまで私の手を焼かせるなんて。背中を守るお約束はしましたが、過剰労働には正当な報酬を要求しなくては。おじさんのクセに、そんな可愛いらしい目をしても騙されませんからね。

992.
灼熱の太陽と乾いた風が、涙を流す暇さえ赦さず水分を奪う土地で彼と再会した。だから私の涙腺は、彼の前で涙をこぼす術を知らない。

993.
黒のタートルネックが隠すもの。首筋の蛇の尾、肩甲骨の火傷の痕、鎖骨の上に残された紅い所有印。黒のタートルネックで私が隠すもの、それは彼と私を繋ぐすべて。

994.
一葉の写真さえ持つことを躊躇うのは、この想いの証拠を遺すことを怖れるから。この身体とこの心と、その身体とその心が覚えていれば、我々がこの世界に遺すものは、この国の未来に重ねるものだけで十分だろう。

995.
ラジオくらいパンと両手を合わせれば直してしまえる魔法使いのくせに、忙しい公務の合間にわざわざ工具を引っ張り出してくる。そんな彼の消えぬ少年の横顔に、遥かな過去と二人来た道を思う。未来は険しくとも、確かに存在すると信じて。

996.
不要な愛というものは存在する。己の想いの向かぬ相手からの想いは、たとえ傲慢と言われようと邪魔以外の何物でもない。不毛な愛であろうとも、 ただこの視線の絡み合う彼女が視界の中に居れば、それでいい。たとえ、この指先さえ届かなくとも。

997.
私の前で着飾らぬ彼女の為に、朴訥な本来の己の言葉を選ぶ。商売女を喜ばせる虚飾の言葉は簡単に唇をつくというのに、ただ数文字のシンプルな言葉が私を困らせる。口ごもる私の前で、知っていますよと、彼女が笑った気がした。

998.
人生の切符なんて、所詮片道。ただ時々自分の意思で駅に降り立ち、人生の分岐を乗り換えるだけ。願わくは、二人の切符の行き先が最期まで同じであるようにと、夜行列車に揺られ月を見る。

999.
銃声のスタッカート、トリガーのタブラチュア、指示を待つフェルマータ、そして、君が私の階級を呼ぶ声が独特のリズムを刻む。私を勝利へと導く、君の音色。

1000.
白は「尊敬」、黄色は「嫉妬」、赤は「愛情」、オレンジが「信頼」、青は「叶わぬ望み」。バラの花言葉を並べて、目の前の蕾を眺める。我々に似合いの言葉はどの色か。貴方の答えを花が教えてくれる訳など無いけれど、それでも贈られた花は、その程度には私を惑わすと貴方は知っているのだろうか?

Twitterにて20130116〜20130224)