10’06月号ネタバレ感想

■何はさておき、ロイアイ



 萌えじゃなくて、燃えました。「ぎゃ〜!」って拳を握る感じじゃなくて、「ああ……」って満足して瞳を閉じるような、そんな想いです。
 
 このBlogを開設した当初から「共闘する二人が好きだ」と、ずっと主張を続けてきた私ですが、まさか精神的な意味合いではなく実際的な意味合いで二人が共闘する場面が見られるとは思いませんでした。
 あの共闘シーンは二人の罪と悔恨に塗れていた焔の錬金術に、それ以外の希望と言う意味を持たせる着地点。ホークアイ師匠にも恥じることない、その研究の成果のもう一つの行く末。彼女が父から、彼が師匠から引き継いだ遺産を彼らが本当に望む形で使う事の出来る充足だと感じました。罪の償いはまた別次元の問題なので今は触れませんが、「背中を託して良いですか?」のあの日から、ここでようやくあの師匠の墓前で語られた意味での『焔の錬金術』は完成したのかと。感無量。胸がいっぱいで、吐きそうになるくらい。ほんと、バカです。(笑)
 ところで、あの二人の戦いのシーンはロイがリザの肩に手を回していますが、あれ、萌えとか言えないですね。リザは先月までの失血量がハンパではないし、実際問題視力にまで影響が出ているようでは相当の低血圧を起こしていて、一人では立っていられない筈です。またロイも視力を失っているので目からの補完情報がカットされる分、平衡感覚が失調している筈です。(試しに目を閉じて仁王立ちしていただければ、真っ直ぐ立っていられない事が分かると思います。)二人とも自力では立っていられない状態で、戦いに参加していると思うと泣けて泣けて。ああ、吐きそう。(違)
 
 先月号の感想のロイアイ語りに絡むのですが、グリリンがリザを置いて行こうとした時、ロイが理屈つけて(実際、闘う為には彼には彼女が必要なんですが)リザを連れて行こうとする優しさに泣きたくなりました。『彼女の我が侭と彼の度量』はここにもあるんだと。
 リザ自身、自分が視界も霞み、ロイに支えてもらって立っているのがやっとの『戦力外』である事は、軍人として分かっているからグリリンに反論出来ない。でも、彼女は最後まで最期まで、この国の為に戦いたいと思っていると思うのです。言い出せない彼女の手を引き、グリリンのリザへの戦力外通知をひっくり返すロイ。その最後の決戦の場に彼女を連れて行く彼の覚悟、彼女の闘う意思を尊重する想いは、男女の関係とか上司部下の関係を越えてただ『共に生きる者』なのだと感じました。
 また同時にこれは『彼の我が侭』でもあるのだと。瀕死の怪我人であるリザを休ませる選択をすることも、彼には出来た。しかし彼はそれをしなかった。それは即ち、これが確実に死を賭した、対ホムンクルス戦から始まったこの国を巡る陰謀の最後の戦いになる事が分かっているから。勝っても負けても、どんな結末を迎えようともその瞬間を共に戦う道を彼は選んだ。(まぁ、負ける気はなさそうですが)そして、リザは己の限界を越えてその想いに応えている。それは『彼女の覚悟』。これもまた、彼らの想いであるのかと。
 しかもそれが彼らの間において、ドラマチックな意味合いの覚悟ではなく当たり前の日常の想いであり、二人にとっては自然な展開であろうことがまぁ『何を今更』ですが、嬉しいのです。
 
 結局ロイは10巻の「うろたえるな!! 思考を止めるな!! 生きることを諦めるな!!」ってのを最後まで自分に対しても、全ての場面において貫いているのでしょう。失明時の読み手の悲嘆を他所に冷静さを保っていた彼に、今ならうろたえてゴメンなさいと言えます。(苦笑)
 あと、グリリン相手にエラそうなロイが好きです。自信家でちょっと尊大で、そんなロイがやっぱり好きです。手パン錬成もあり、戦いに挑めば「しっくりこんな!」とか「オールマイティで便利だな」とか比較的呑気な発言してる彼も好きです。
■他のみんな

 全ての人に見せ場があって、主人公はやっぱり主人公で、全てのシーンを語りたい。そんな第107話でした。しかし、本当にあと一回で終わるんだろうか? いつもの2倍くらいページ数あったりして。(笑)
 まさかの巻頭カラーからロイアイで吃驚。で開いた集合絵に、ヒューズもバッカニアさんもフー爺さんもキンブリーもハボもいて、ちょっと涙腺が危なくなりました。
 
 各々が各々の役割をきちんと果たし、本当に脇役が誰もいない総力戦。主人公たちだけなじゃなく名もなき一般兵士たちも戦いに参加する凄まじさは、牛先生ならではだと思います。その一方で、戦線離脱することで自分の役割を果たすオリヴィエ様や、リンを守るランファン、そしてアルの覚悟、メイの決断、全てが見所でもうもう消化不良起こしそうでした。
 特にアルとメイはすごい。自分の存在を懸けても兄を信じるアル、アルを失う覚悟でアルの決断を後押しするメイ。これ、メイが女だからこそ出来る決断だと思いました。メイって、ここ一番での決断の早さとその覚悟が本当にハンパない子で、泣けました。リザの命と賢者の石を天秤にかけた時もそうでしたが、今回の涙の決断もアルを思うからこそなんですよね。正直、メインヒロインより活躍するとは吃驚です。
 そいで、あのエドの猛ラッシュ。仲間の期待と応援を一身に背負い、弟の意志を受け。ああ、やっぱり主人公はこの子だったんだなぁと言う爽快感。それに対するグリリンの静けさ。そして、最初のレト教事件での決め台詞に戻る格好良さ。ああ、本当に最後なのだとしみじみ、盛り上がり気持ちよく、言葉もなく(いや、語り過ぎているから)
 来月が楽しみ過ぎて、寂し過ぎて、また吐きそうです。(笑)
■ちょこっと文章化

 普段、感想はあんまり書かず二次創作に昇華するんですが、今回は書かずにいられなかったです。ああ、本当に最後なんだなぁと。「アマイヤマイ」続編とか言っていたけれど、補完する必要あるのかしらと思いますね。ここまで原作が凄いと。
 ちなみに、二次補完するならこんな感じです。要は上のロイアイに関する文章を物語に変換するだけです。カラーページの部分だけ変換。
 
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 グラリと視界が揺れた。
 何食わぬ顔で目をこすりながら、リザは肝を冷やす。さっきから首筋の傷を押さえながら、定期的にバイタルをとっているが、もうずっと脈拍は50を切っている。この分だと血圧は上が80もあれば良い所だろう。指先も冷たく、悪寒が止まらない。失血による血圧の低下は、リザの戦闘力どころか通常の生命活動すら危うい状態を引き起こしている。しかしリザはバシッと音を立てて自分の頬を張り、自分に言い聞かせるように胸の内で呟いた。
 しっかり。
 そして視線を隣りへと動かし、何とか状況をつかもうと聴力に全神経を集中させているらしいロイの横顔を見つめた。いつも強い意志の力に満ちていた彼の瞳は今は虚ろに何も映していないにも関わらず、それでも静かに燃える闘気をひたひたと宿している。こんな状態でも、彼はまだ戦い続ける気でいる。そんな男の横顔を見ていると、リザの脳裏に昔、彼に叱咤されたあの言葉が浮かぶ。
「うろたえるな!! 思考を止めるな!! 生きることを諦めるな!!」
 その言葉と同時に先刻ロイを諌める為に死を覚悟した自分の姿が思い出され、あのラストと言う女のホムンクルスと相対した時と同じ轍を踏みかけた事に想い至り、リザはブルリと身震いした。
 そうだ、あそこでリザは彼のあの問いを覆さねばならなかったのだ。そんな自体になる事は有り得ないと。二人の前には二人で生きて行く道しかないのだと。
 大佐はこんなになっても諦めていないと言うのに、私はなんてバカな事を……!!
 一瞬の悔恨を振り切り、リザはそれでも、あの時と同じく自分を捨てない上官を見つめる。本来の軍人としての冷静な判断を求めるなら、肉体的ダメージの大きさを鑑みればリザもロイも戦線離脱すべき状態なのだ。しかし、この局面で彼はまだリザに戦えるかを問うた。この愚直な男は、まだ自分を連れて戦う気でいるのだ。何ものをも映さぬ閉ざされた瞳の奥に、様々な作戦を巡らせ、這いつくばっても倒れても、この戦いに勝つ為に。この国の民を守る為に。あの青臭い夢を叶える為に。そう、路傍でゴミのように死のうとも。
 彼の想いに応えるには、リザは倒れるわけにはいかない。男の青い軍服に縋り立っているのがやっとのリザは、必死に意識を繋ぎ止める。が、体力の極端な低下のせいで集中力を欠く彼女の思考は、散漫に様々な二人の局面を脳裏に思い浮かばせる。思い出の見せる幻影に負けぬよう、リザは自分を全ての意味で支える男の温もりを指先に感じながら、最終決戦の場に向かう上昇する柱の上でギッと唇を噛み締めた。

 
 こんな感じで。てか、これじゃ、ただのノベライズ。(笑)