over the phone

over the phone : 電話越しに
  
     *
 
RRRRRR RRRRR
 
ガチャ
 
『はい、こちら東方司令部、、、』
『いよぉっ!リザちゃん、相変わらず良い声してるねぇ。うちのエリシアちゃんも可愛らしい声にますます磨きがかかって、、』
 
  「大佐、ヒューズ中佐からお電話です」
 
『あれ?リザちゃん?おーい、おーい』
『何だ、ヒューズ。私は忙しいんだ』
『おー、ロイか?俺も忙しいぞ、何たって前例のない軍法の解釈をした判決が出ちまってよ。皆、対応にてんやわんやだ』
『だったら、仕事しろ!』
『そ〜んな怒鳴ってばっかじゃ、リザちゃんに嫌われちまうぞ?』
『人の副官を“ちゃん”付けで呼ぶな!』
 
  「大佐、電話はお静かにお願いいたします」
  「、、、私が悪いのか?」
 
『お、ロイのクセに焼きもちだな♪』
『黙れ、ヒューズ』
 
  「ですから、お静かにと」
  「分かった、分かったから」
 
『ヒューズ、用件は何だ?ないなら、切るぞ』
『まぁ待て、まだ愛妻自慢も愛娘自慢も一言も出来てない。うちのエリシアちゃんは最近ピンクのお洋服がお気に入りでな!可愛〜ぞ〜』
『燃やされたいか?ヒューズ』
 
  「失礼します」
  「あ、中尉。私の発火布を何処へ持って行く!中尉!」
 
『はっはっは〜、ほら、リザちゃんも俺の話聞けってよ』
『調子に乗るな!だから、、』
 
  「中尉!だから発火布を、、、あ〜、書類は増やさなくていい!」
  「どうぞ」
 
『で、俺の話を聞く体勢は整ったかな?』
『ペンを持たされた。サインしながら、聞けと言うことらしい』
『まぁ良い。で、これはオフレコの話なんだがな、』
『ちょっと待て。ヒューズ、お前どこからこの電話をかけている?』
『どこって、いつもの軍法会議所の電話コーナーだ。いつもの電話交換手の彼女もそこにいるぞ♪』
『軍の回線を使って、オフレコもクソもあるか!』
『まぁ、黙って聞けって』
『くだらん話なら、即刻切るぞ』
 
『ふっ、聞いて驚け。お前が見たがっていた3年前の国家錬金術師殺害事件の現場写真と調書の閲覧許可、出たぞ』
『本当か!』
『ああ、本当だとも』
『恩に着る、ヒューズ』
『ただし、全てを見る事は出来ない。それから見た物については、』
守秘義務だろう?そのくらい分かっている』
『上等だ』
『しかし、よく許可が下りたな』
『本来なら閲覧禁止なんだがな。まぁ、その辺りは有能な俺に感謝しろ。だから、一応正式な許可ではあるが、オフレコで頼むわ』
『分かった。礼は必ずする』
『待ってるぜ』
 
『しっかし、この事件にこれだけ拘る理由はなんだ?お前、殺された錬金術師とは面識あったのかよ』
『ああ、何度かお会いしたことはある。まぁ、理由は、、、そうだな、今度会った時にゆっくり話す』
『それこそオフレコってとこか』
『まぁ、そういうことだ』
 
『そういや、お前、そこの娘さんには会ったことあるか?』
『5年程前に。それがどうした?』
『俺、こないだ会って思ったんだけどよ。あのお嬢さん、彼女に似てね?』
『誰に』
『リザちゃん』
 
『…否(いや)。似ていない』
 
『そうか〜?金髪にヘイゼルカラーの瞳だし』
『似ていない。だいたいそれだけでは似ているとは言えまい』
 
『雰囲気っていうかさ』
『似ていない』
 
『髪の毛アップにしてるとことかさ』
『似ていない』
 
『ちょっと頬がポチャッとしてるけど、クールなとことか』
『似ていない』
 
『身長も同じくらいだし』
『似ていない』
 
『ちょっと目がクリッとした所』
『似ていないと言っているだろうが、ヒューズ。しつこいな』
 
『そうか〜?グラマラスな体型も似てると思うがな〜』
『いい加減にしろ!ヒューズ。私に喧嘩を売っているのか?』
『へ!?』
『私の副官は、あんな丸ポチャぷよぷよな体型では断じてない!ボンッキュッボンだ!メリハリだ!クビレだ!例えバストが中尉と同じ90cmだとしてもアンダーのサイズ差が、』
『ロイ、何を言っ』
  
ガチャン
プーッ プーッ プーッ
 
  「ち、中尉?」
  「。。。。。」
  「中尉、人の電話を勝手に切るとは、、、」
  「大佐、今、何のお話をしていらっしゃいました?」
  「き、君、そんなにこやかな顔で人のこめかみに銃を突き付けるのは、止めたまえ。わ、私が何をしたと、」
  「副官のバストサイズを軍の回線で暴露するのが、お仕事の内とは到底思えませんが」
  「はっ!!!ち、違う!私は君の名誉を守ろうとだな。聞いてくれ、中尉、ちゅうい〜〜!」
 
 
 
      *
 
プーッ プーッ プーッ
 
  「あれ?切れちまった。ロイの野郎、何をワケの分からんエキサイトをしてんだか」
  「あの、ヒューズ中佐。電話交換手の身で差し出がましくて申し訳ありませんが」
 
  「ん?何だい?」
  「3年前の事件の被害者のお嬢さんのことなんですけれど。。。」
  「彼女がどうしたって?」
  「私、あの事件の時は受付にいましたから、何度もお会いして存じ上げているのですが」
  「ああ、そう言えばキミ、去年の配置換えでここに来たんだっけな」
  「ええ。彼女、あの事件の心労で一気にやつれてしまわれて、今の体型になられたんですよ」
  「え?」
  「ですから、マスタング大佐がお会いになられた頃は、かなりふくよかでいらっしゃったはずなんです」
  「どのくらい?」
  「軽く見積もっても、優に90キロは体重がおありになったかと、、、」
 
  「、、、」
  「中佐?」
  「ブッ。。。ッハッハッハ〜」
  「中佐、笑い事では、、、」
  「こりゃ笑うしかないだろ〜。そりゃあ、リザちゃんに悪いこと言っちまったなぁ」
  「ええ、まぁ、そうなんですけれど、、、あの、大丈夫でしょうか」
  「何が?」
  「お電話が切れる寸前に、撃鉄を起こすような音がしたのが気になるのですが」
  「あ〜、ロイの事だから大丈夫だろう。多分、半殺しくらいで勘弁してもらえるって」
  「ヒューズ中佐。。。貴方って方は。。。」
  「それより、エリシアちゃんの最新アルバム見るかい♪」
  「遠慮させていただきます!」
  「まぁ、そう言わずにさぁ。電話切れちまったから、今日は不完全燃焼なんだよ〜。」
 
 
 
 
Fin.
 
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【後書きのような物】
拙いSSではありますが、シークレット・ガーデン(http://www.geocities.jp/ukon_no_tatibana/)の朔夜様に捧げます。
朔夜様のみ、お持ち帰り可能です。返品も受け付けておりますので、、、どきどき。
人様にお話を捧げるのは初めての事なので、もっすごい力入り過ぎて空回ってしまった気がします。orz
申し訳ありません。
 
電話と言うのは、会話している本人以外は片方の会話しか分からない微妙さが面白いかなと。
会話のキャッチボールのズレ、みたいなものを書きたかったのですが、、、、
う〜ん、精進いたします。
 
しかし、ヒューズ中佐って天然トラブルメーカーみたいな気が。(苦笑)